大人のコラム 第2回 「いけばなinterview」

いけばな

−− 昨年「久保島兄弟」として生け花の出展をしていただいた久保島一智さんに、普段私達があまり触れる機会の少ない生け花の世界についてお話を伺いました。

久保島さんには昨年の「大人のための文化祭」で、ご兄弟で生け花の展示をしていただきました。

その作品を観てとても感銘を受けたのですが、まだ本格的に生け花を始めて日が浅いと聞きました。

まずは久保島さんが生け花を始められたきっかけから教えてください。

一番大きなきっかけは、父が現役の華道家だということだと思います。ただ、最初から父と同じ職業にと考えていたわけではありません。

結婚式場で働いてチームのキャプテンになったり、高校の時からバイクが好きだったのでバイク屋で働いたりしていました。花は身近なものだったしいつかはやりたいという気持ちはあったけど、やりきる自信がなかったんだと思う。

だから、最終的に踏ん切りをつけたのは年齢的なものが大きかったと思います。30才になったらもう始められないだろうと思って、29才から腹を決めてスタートしました、父が還暦を迎えたのもきっかけかもしれません。

−− 昨年の文化祭では弟さんと一緒に一つの作品を作って頂きましたが、弟さんもほぼ同じ時期に生け花を始められたんですか?

そうですね。弟も勤めていた会社を辞めてほぼ同時期くらいに始めました。

−− それにしてもオトコ兄弟で生け花ってかっこいいですよね!一般的に生け花というと女性がやるイメージですが、それを男二人でやるところがまた素敵です。2人で一つの作品を作るってことあるんですか?

合作という形で、大きな作品は良くありますよ。ただ、監督(指示する人)は一人ですけどね。あと女性のイメージが確かにあるかもしれませんが、男性のみの生け花教室なんてのもあるんですよ。

−− そうなんですか!?男性のみのいけばな教室というとなかなか想像しにくいですが…

いけばな教室では、どのようなことを教えているんでしょうか?

教室では、基本的な花のお手入れの仕方だったり、どのようにいけると綺麗なのかだったりを教えることが多いと思います。

また作品にはメインの向きがありますが、入ってきた時に見える顔や、違うところからも見た顔など、色々な魅せる角度というものを意識することとか…あとは飾る場所によってもいけ方は変わってきます。空間を意識することだとか。花自体の知識を教えたりすることもあると思いますが、私の先生はその知識にとらわれることを避ける為に、あえて教えないことも多いと話していました。

これは個人的によく先生に指摘されるのですが、なにが主張したいのか分からないものはやはりダメなんですね。自分自身を表現するのがいけばなだけどただ飾るんじゃなくて、やはりそこには核となる主張がないと。あとは「形を整えようとし過ぎ、遊び心が必要」と指摘されることもよくある。

−− なるほど。場所によっていけ方が違うというのは興味深いですね。

たとえば花言葉なんかも意識されるのですか?作品の裏に意味を込めるというか…

いや、実は花言葉ってあてにならないんです。一つの花の一つの色についても花言葉って多種多様で。その土地土地で、神話からくる花言葉だったり、文化によっても違うんです。

−− 神話からも…花言葉って昔から、しかもそんなに色々あるんですね。

では生け花にはどのような歴史があるのでしょうか?

生け花の起源は、室町時代武士の間で書院造という建築様式が確立され、そこの床の間に飾るものとして掛け軸や、花などが使われるようになりました。

江戸時代になると武士の家には大広間ができ、大きな装飾、生け花が要求されるようになります。一般の町人などの家にも、数奇屋造りという住居ができ、小さい床の間ができるようになって、一般家庭にも自由な生け花が浸透してきたといわれています。

いけばな

−− 昔の人は花が今より身近だったということでしょうか?

そうですね。身近というよりかは、他にものが少なかったということじゃないでしょうか。どこの国でも、文化でも、文明の進化の度合いは異なるけど、大きい目でみるとものが少なかったのは同じでしょう。

だから、どこの文化でも何かを形容する事に”花”なり”自然現象”を取り入れているのかもしれない。

−− そういえば日本にも、美しい女性を表す「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花」という言葉が昔からありますが、とても美しい表現ですよね。

いけばなを始めてそれぞれの花について知って、本当にその通りの表現というか…たとえば芍薬は立ち姿のように茎がまっすぐに伸びていますよね。(インタビュー当日、偶然にも芍薬を持っていらっしゃってその場で生けてくださいました。)

最近は詩が載っている古い本なんかも読んでいるのですが、やはり花の名前や植物がよく出てくるんですよね。また、花伝書も読んだりしています。

−− やはり花をいけること以外にも色々とお勉強されるんですね。

−− では、個人的に一番聞きたかった疑問なのですが、生きている植物を切ってしまうのになぜ“生け花”というのでしょうか?

人それぞれ考えが違うかもしれませんが、あくまで自分なりの、考えです。

生け花、活け花、造け花、人によって書き方も異なります。作品は、同じ花材を使っても、一つ一つの素材の形が違う。それによってできる作品も違ってくる。十人十色というように、作り手が100人いれば100通りのものが出来上がる。

ただ、単に飾るだけでなく、その場、雰囲気、来る人にあわせて生けるので型があるのかと思います。

よく先生に言われますが、適当はめちゃくちゃにやるのではなく『適するに当たるところに生ける。』と言われますが、その通りだと思います。素材を見る事、本当にその場所が適しているかを見る目が必要になります。

すごく難しいことなんですけどね。人生と一緒なんですよ。色んな経験をした人が色んな考えを持ち、技術を持つて、形にする。楽しいものですよね。一つの作品は、映画や、ドラマと同じ、舞台なんです。一人一人の役者は、作品でいえば、素材の花。それを生かすことのできる、監督。生け手。

生け花は、その場にあわせて花を生かすこと。色々な花材を組み合わせるので、誰が主役なのか、判断して生かしてやることによって、作品が出来上がる。全く同じことだと考えています。

−− なるほど。そういう意味でも、絵画などと違い“生きている”作品なのだと感じますね。

そうですね。また素材を生かしつつ、人の生き様を表現するものだとも思っています。だから、色々な技術を駆使して出来るだけ長い時間“きれい”を保たせようと努力します。

例えば時間が経つとつぼみが開いたりして、表情が変わってくることを計算したりもします。去年文化祭に出展した際も、朝と夕方では見え方が変わってくるように花材を選びました。

−− そうだったんですか!それを知らないで久保島さん兄弟の作品を見ていたのは少し損した気分です(笑)。

昨年拝見させていただいてから、もっと色々な作品を見てみたいととても興味がわいたのですが、どういうところで見られるのでしょうか?個展などが開かれているようなイメージもあまりないですよね。

デパートやホテルのロビーでは、ほぼ年中飾っています。お金を払ってまではなぁ、という人もいると思います。まずは、デパートやホテルのロビーに行って見てみるのが一番かと思います。小さいものだと、市役所とかにもありますね。

楽しみ方は人それぞれだと思うけど、あまり見る機会のない人は、興味本位でいいので、ホテルのロビーとかにある生け花を見てみて下さい。その場の雰囲気か、グッと変わります。

近づいて一つ一つの植物を見ても面白いと思います。生花は造花と違い、生きている力が強く感じられます。その力の流れを見ることも楽しいでしょう。

これはどんな事でも言えることで自分の根底にもあることの一つですが、何事も気にすることだと思います。アンテナを張り続ける事ですね。このような芸術・文化は意外と身近にあるものです。ぜひ、かまえずに気軽に見てください。

季節の節目やお正月なんかにはホテルのロビーによく飾っていますね。あとはデパートのギャラリーで展覧会をやっていたり。 でも少ないですよね。目にする機会が。もっともっと身近にしていきたいです。

−− では最後に、いけばなに触れる機会があった時に作品をどう見ると楽しいですか?

まずは難しいことを考えずに純粋に、きれいだなと感じることを楽しんでほしいですね。そして一つ一つの素材を見てもいいと思うし、素材を合わせて形成されているものを見ても楽しい。

今の自分は、なんでその花なのか考える事と、その構成から繰り出される力の流れを考えながら見ています。

−− あまり触れる機会がない芸術は鑑賞する際に構えてしまうことも多いかもしれませんが、まずは気楽にその世界への第一歩を踏み出してみることが大事なのだと改めて感じました。

踏み込んでみないと知らなかった世界がまだまだいっぱいあるなと感じるインタビューでした。

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